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系列位置効果とは?仕組みや活用方法をご紹介

系列位置効果

系列位置効果とは?

この記事を読むための時間:5分

系列位置効果は、人の記憶に関する心理学用語のひとつです。

しかし、実はWEBデザインにおいても活用することのできる効果なのです。こういった心理学の効果をうまく使うことで、さらにユーザビリティが高いサイト運用の手助けとなり、サイトの印象も大きく変わるでしょう。

この記事で詳しく解説していきますので、WEBサイトを運用している方やWEBデザインに携わっている方は、ぜひ参考にしてみてください。

系列位置効果とは

いくつかの情報を同時に覚えようとするとき、覚える順番によって記憶の度合いに差が生じる現象です。

一般的に、物事を記憶するとき、情報の最初と最後は覚えていても中盤の部分は忘れやすい傾向にあります。

例えば、単語リストを覚える際に、リストの最初と最後の項目は中盤の項目よりも覚えている割合が高くなります。他にも、匂いや音楽を記憶する際にもこの効果は働くといわれています。

系列位置効果の仕組み

この効果は、単に中間部分を忘れやすいという意味ではありません。

最初に覚えたことが記憶に残りやすくなる効果」と「最後に覚えたことが記憶に残りやすくなる効果」の2種類の記憶の仕組みによって、中盤の部分が記憶に残りづらくなるのです。

初頭効果

最初に覚えた情報が記憶に残りやすいことを初頭効果といいます。

これは、あとから提示される情報に比べて最初の情報は覚える時間が長く、覚えるための繰り返しの行動が十分にできるため、短期の記憶から長期記憶(比較的長い期間に渡って情報が記憶されること)に情報が転送されて記憶が定着しやすいためと考えられています。

初頭効果の例

  • 英単語を覚える場合
    英単語帳の最初のほうに出てくる単語ほど「覚えよう」という意識が強く働きます。その結果、記憶の中でその単語が何度も繰り返し反復され、最終的に長期の記憶となり情報が定着しやすくなります。
  • 第一印象
    この効果によって第一印象も記憶に残りやすくなります。よく「第一印象を大切にしましょう」といわれていますが、これも実際の記憶のシステムに則した考え方なのです。
  • 発表会を見る場合
    最初のうちは集中して発表会を見ていても、中盤に進むにつれて集中力が途切れていく現象もこの効果によるものです。

親近効果

最後に覚えた情報が記憶に残りやすいことを親近効果といいます。

これは、最初に覚えようとした情報に比べて覚えるために割ける時間が短いため、短期記憶(数秒~数分間という短期間だけ情報が保有される記憶のこと)に情報があるという状態です。

親近効果の例

  • 英単語を覚える場合
    英単語帳の最後のほうに覚えようとした単語は、新しい情報のためしばらくの間短期の記憶に留まります。その結果、英単語の勉強が終わったあとに思い出してみると、まだ記憶に残ったまま覚えたままでいられることが多くなります。
  • プレゼンの場面
    参加者から複数の案が提示されますが、採用されやすいのは最初に出た案より最後のほうに出た案ということが多くあります。これも「最後のほうに聞いた案の記憶が短期の記憶に残っている」という効果のひとつです。
  • 発表会を見る場合
    発表会を見ていて、中盤で集中力が途切れても、終盤に近づくにつれて集中力が復活してくる現象もこの効果によるものです。
  • 語尾が強く聞こえる
    誰かと会話をしていて語尾のほうが大きな声で聞こえるのもこの効果が働いている例です。

系列位置効果の実証実験

系列位置効果については、様々な学者によって提唱されています。

以下で実証実験の例を見ていきましょう。

グランツァー氏とカニッツ氏の実験

この実験では、短期記憶と長期記憶の性質の違いを検証しました。

実験方法

  1. 被験者をグループA、B、Cに分け、それぞれ15語の単語リストを1単語ずつ1秒間表示し、2秒ずつの間隔をあけて覚えてもらう
  2. 単語を覚えてもらったあと、グループBは10秒間、グループCは30秒間、単語と関係のない数字を叫んでもらう(妨害課題)
  3. 最初に覚えた単語を回答してもらう

実験結果

  • どのグループも中間の単語の正答率が下がっている
  • どのグループも、最初に表示された単語は長期の記憶に定着していて、妨害課題の影響を受けにくい
  • 妨害課題がないグループAは、後半の単語が短期の記憶に定着していて正答率が高い
  • 妨害課題の時間が長いグループほど、後半の単語の正答率が低い

ソロモン・アッシュ氏の実験

この実験では、初頭効果について検証しています。

実験方法

  1. 被験者をグループA、Bに分け、それぞれに人の性格を表す単語を読んでもらう
  2. 読んでもらう単語はグループごとに並び順を変え、グループAには「明るい・素直・頼もしい・用心深い・短気・嫉妬深い(ポジティブな順番)」、グループBには「用心深い・短気・嫉妬深い・明るい・頼もしい(ネガティブな順番)」とする
  3. その単語を読んでどんな印象を持ったか回答してもらう

実験方法

  • グループAは、この人物をポジティブな人だと捉える割合が多い
  • グループBは、この人物をネガティブな人だと捉える割合が多い

つまり、人は最初のほうに表示された言葉を強く覚えているということが検証されました。

N・H・アンダーソン氏の実験

この実験では、親近効果について検証しています。

実験方法

  1. 被験者をグループA、Bに分け、模擬裁判の陪審員になってもらう
  2. グループAでは「弁護側と証言側で2回ずつ証言を述べる」、グループBは「片方が証言を述べたあと、もう片方が証言を述べる」という方式で裁判を進める
  3. 陪審員による判決を下してもらう

実験方法

  • グループA、Bともに、最後に証言した側が勝利した

つまり、最後に表示された情報のほうが強く記憶に残るということが検証されました。

系列位置効果の活用

この効果はWEBデザインでも活用することができます。WEBサイトを運用している方は、ぜひデザインの参考にしてみてください。

スマートフォンのアプリケーション

スマートフォンやタブレットに対応したWEBサイトの中で、上部に三本線(≡)のアイコンを見かけたことはありませんか?このアイコンはハンバーガーメニューといわれるナビゲーションメニューで、タップしたりクリックしたりするとメニュー項目が表示されます。

しかし、現在ではハンバーガーメニューを使用しているサイトは少なくなり、代わりに画面下に「HOME」や「メッセージ」といったメニュー項目が表示されています

これは系列位置効果を最大限生かすためのもので、ユーザーが最も使用頻度が高いボタンを画面の左側や右側に配置しています

ECサイトの検索順

ネットの通販サイトで商品を検索するとき、表示される順番が「新着順」ではなく「人気順」になっているのを見たことはありませんか?

これは、人気順にしておくことで、より多くの人が気に入るであろう商品が、最初にユーザーの目に入るように意識されているのです。

ユーザーにとって最初に商品を見たときの第一印象は重要です。しかし、もし人気順でなく新着順にしてしまうと、魅力的でない商品が最初に目に入ってしまい購買意欲が半減してしまう可能性があります。

まとめ

ユーザーに好まれるWEBサイトには、人の心理をうまくつく工夫がなされています。

特に、今回解説した効果は、WEBデザインの分野では必ず知っておくべき基本法則のひとつです。人の心理に配慮したデザインが、そのサイト全体の印象を決めるといっても過言ではありません。

WEBサイトを運用している方や、WEBデザインをされる方は、ぜひ意識してみてください。


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