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ブラック企業の特徴とは?【電通の過労死事件で思った】

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言葉ばかりがひとり歩きしている「ブラック企業」について調べてみました。

JetBブログ編集長の相馬です。

2015年12月25日に電通の社員・高橋まつりさんが自殺した事件。メディアでも盛んに取り上げられ、2016年9月に労災認定が下りました。月の残業時間は公表されているだけでも105時間を超えていたそうです。一方で電通が労働時間の短縮や子育てする社員へのサポートに取り組んだ「働きやすい企業」に認定されていたことが発覚し、ネット上では「ブラック企業だろうが!」と大炎上が起こりました。
確かに私も「ブラック企業だなぁ」と思ったのですが、そもそもブラック企業って何?という疑問もあります。長時間労働、低賃金、パワハラなどブラック企業と言われて思いつく要素はいくつかありますが、何だか曖昧です。職場の愚痴を聞いて「うわブラックだわ」と応じるのはもはやマナーのようなところもあり、言葉だけがひとり歩きしている印象もあります。

そこで、ブラック企業についてリサーチしてみました。

「ブラック企業」という言葉の誕生

ブラック企業という言葉はネットスラングだったそうです。IT系のエンジニアたちが自分たちの劣悪な労働環境を指して「ブラック」と読んでいたようです。時期としては2000年代半ばから後半だと言われています。非正規雇用が一気に増えた時代背景の中で、境遇を嘆く形で広まったのが始まりでした。
その後、映画や小説にも登場するようになり、徐々に世間に認知され、2010年以降「ブラック企業じゃね」「ブラック企業だわ」は日常用語になりました。

このような経緯で広まった言葉のため、明確な定義は無いのだそうです。
ただ、労働相談を受けているNPO法人POSSEは、ブラック企業の特徴として3つのパターンを挙げています。

前提となる特徴

ブラック企業の特徴は大量に社員を採用することにあるそうです。ブラック企業というと、ぼったくりバーのような特殊なものをイメージしがちですが、そうではなく、大企業が大量採用する中で行われているのだと言います。

ブラック企業の特徴①選別型

大量採用して半分以上が辞める(辞めさせる)ことを前提にした労務管理を行っているケースです。企業は入社させてから必要な人材を選別し、会社に忠実で有能な人材だけを残し、あとは辞めさせられるように仕向けるのだそうです。

◆POSSEに寄せられた相談例◆

あるIT企業では、1,000人規模で毎年200人以上採用するのですが、1年経過すると半分は辞めさせられているのです。採用されてすぐに、この人間は使えるか使えないかという選別が行われて、使えないと判断された人に関しては、カウンセリングと称する徹底的な嫌がらせをする。「お前は何でこんなに仕事ができないんだ」「会社に貢献できないのは自分の今までの人生に関係している。親にどんな教育をされたか、小学生時代から振り返って反省文を書いて、どうして能力のない人間なのかをレポートせよ」などということを毎日やられて、うつ病にされてしまう。そうしたうつ状態にしたところへ企業側は自己都合退職を迫って辞めさせてしまうのです。こうした選別型のブラック企業はIT企業などに顕著に見られます。

ブラック企業の特徴②使い捨て型

積極的に辞めさせることはないものの、労働環境が過酷なため、長期間の就業が難しいケースです。とりわけ小売や外食産業に多いそうです。

◆POSSEに寄せられた相談例◆

過労死事件を起こした日本海庄やでは、基本給20万円と言って採用して、実はその中に月80時間分の残業が含まれているというのですね。これは研修中に明らかになって、月100時間以上の残業をさせられて彼は24歳という若さで過労死させられてしまった。こうした企業側が基本給と言っている中に月100時間、80時間などという残業が組み込まれているというのが、現在、IT産業、飲食、小売、介護などの新興産業に広がっていて、スタンダードな状況にもなってきています。

ブラック企業の特徴③無秩序型

「お前の代わりはいくらでもいる」という態度で公然とパワハラやセクハラを放置しているケースです。マスコミなど、志望者が多い業界に多く見られます。この手の企業は上司が気に食わないとすぐに部下を辞めさせます。コミュニケーションに気を回すくらいなら、イエスマンを採用したほうがいいという考え方です。若い人間の価値が異様なまでに低くなっている現状があります。

これらの特徴は定義とは言わないまでも、ブラック企業の一般的な認識に重なる部分が多いと思います。
ちなみに弁護士やジャーナリストなどが作る「ブラック企業大賞2016」にノミネートされている企業は以下の10社です。

ブラック企業大賞2016ノミネート企業

▼エイジス
JASDAQ上場の棚卸し代行業者。違法な長時間労働を行なっていたとして、千葉労働局から是正勧告を受けて、社名を公表された。厚労省が行政指導段階で、違法な長時間労働を行なっている社名を公表するようになってから、全国初のケース。

▼電通
2015年に入社1年目の高橋まつりさんが過労自殺。25年前には入社2年目の男性社員が過労自殺。3年前にも30歳の男性社員が過労で病死。十分な改善策を実施せず、厚労省の抜き打ち強制捜査を受けた。

▼ドン・キホーテ
最長3カ月で415時間の時間外労働など、36協定に違反する長時間労働をさせた。書類送検され、50万円の罰金。

▼プリントパック

印刷サービスの企業。2013年に労働組合が結成された後、組合員に対する配転命令やボーナスを支給しないなどの扱いをしたとして、2016年7月に京都府労働委員会から不当労働行為と認められた。

▼関西電力

高浜原発1、2号機の運転延長申請を担当していた管理職の男性が2016年に自殺した。1ヶ月の残業が200時間を超える月もあった。過労自殺として労災認定された。

▼佐川急便

経理などを担当していた男性社員が2011年、うつ病で自殺した。直属の上司から、エアガンでうたれたり、つばを吐きかけられたりするなどの嫌がらせを受けていた。上司は退職したいと訴える男性に「そんなの関係ない」と残務処理を指示していた。2016年、仙台地裁は労災を認定した。

▼サトレストランシステムズ

「和食さと」「すし半」「さん天」などの飲食店を展開。2015年12月、長時間労働、残業代の未払いで、かとく(過重労働撲滅特別対策班)による強制捜査が入った(その後、約650人の従業員が総額4億円あまりの未払い賃金を支払う)。また、16年9月には、労働基準法違反で同社や部長らが書類送検された。

▼宗教法人 仁和寺

元料理長の男性が、時間外労働がほぼ毎月140時間だったほか、年間の勤務日数が「356日」、うち349日は連続出勤だった。男性は仁和寺を相手に慰謝料などを求めて提訴。2016年、京都地裁は男性の訴えを認め、約4200万円の支払いを命じた。

▼ディスグランデ介護(茶話本舗FC企業)

大手デイサービス「茶話本舗」のフランチャイズ店舗。今年、従業員に対する賃金未払いなどを理由に労基署から是正勧告があった。人手が不足しており、休憩時間がほとんど取れない状態だった。サービス残業など劣悪な労働環境も報告されている。

▼日本郵便

2011年以降、パワハラを理由にした自殺が相次いだ。2016年10月福岡高裁は、心疾患で亡くなった男性社員について、死亡との因果関係は認めなかったものの、上司からのパワハラがあったとして、同社に330万円の支払いを命じた。

https://www.bengo4.com/c_5/n_5416/

大企業ばかりですね。

恐ろしいのは、ブラック企業は固定のものではなく、一般企業もブラック化するリスクを孕んでいる点です。

一般企業がブラック化するリスク

POSSEの今野氏の発言を紹介します。

考えなければいけないポイントは、今の時点でこのような新興産業を中心に新卒のところでブラック企業が広がっているという特徴とともに、これまではまともだった企業がブラック化しない保証はまったくないという問題です。労働市場に人がたくさん余っているのでいくらでも使い捨ててもいいような労務管理に切り替えていくということは、これまでまともだった企業でも起こり得ます。

また、企業の中の一部門、あるポストある部署でブラック化が起こった時に、それを止めなくてもいいと企業が全体として判断してしまうようなことが容易に起こっているのではないかという問題も労働相談事例を見る中で危惧していることです。

典型的な事例で言うと、ある交通系の大手企業から労働相談が寄せられて、これまでは労務管理はまともだったのだけれども、IT系のいわゆるブラック企業コンサルタントが人事に入ってくるということがあって、労務管理のあり方が突然変わった。正社員をいじめてどんどん辞めさせて代わりに契約社員を入れていくというようなことが突然吹き荒れて止まらない。どうすればいいんだという相談だったわけです。

それはブラック企業という構図が、突如として出てきたわけではなくて、日本型雇用の中で企業が非常に強い権限を持っているわけですけれども、その権限を悪用し、いじめて辞めさせるということができてしまうわけです。老舗企業の中でもそういうことをひとたびやろうというふうに経営が判断してしまった時に、これはなかなか止められないというのが実態ではないかと思うのです。

もちろん職場における労働組合の強さが相当影響してくるでしょうが、労働相談の事例を見ていると、部署単位でブラック化してくるときに、ほとんど労働組合の力を発揮できていないケースが多く寄せられています。ある個人がターゲットになった時に、労働組合が存在感を発揮できていないというようなことが多く見受けられるので、ブラック化をなかなか止められないということも含めて、今は新卒のところで大きな問題になってきていますが、ブラック企業が日本社会全体に広がってくるのではないかと懸念しているところです。

参照元:http://editor.fem.jp/blog/?p=1383

どんな企業にもブラック化のリスクはあるということですね。
中小企業には労働組合がないところも多いと思いますし、人事の影響がよりダイレクトです。常にブラック化していないか注意を払う必要があると思います。

また、企業だけの責任ではありません。
元電通のコピーライターのマエダショータ氏は電通の過労死事件に際し、自身のブログで業界の実態を次のように語っています。

広告業界の実態

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僕がいた頃でも、「残業は月○○時間まで」、「夜十時以降の残業をする際は、上長の承認を事前に受けること」などといった非現実的な規則が導入されていった。夜九時に営業から電話があって、「あの件、変更になった! 明日までに代案を出せって!」と言われたりしたなら、「上長の許可が得られませんので対応できません」と答えろとでも言うのだろうか。それを営業はクライアントにどのように伝えるというのか。また、営業は、そう言うコピーライターに次に仕事を頼みたいだろうか。

先人たちの努力により「大抵のことはやり遂げてくれる」との評価を築いた電通は、いつしか「どんな無理を言ってもいい存在」に成り下がってしまった。

日本企業の広告宣伝部、広報といった部署が重要視され肥大化する中で、広告主の発言権が際限なく大きくなってしまい、キーマンをあたかも神のように扱うのが広告業界の悪癖となってしまった。もちろん、靴を舐めるようにして増長を許してきた電通、博報堂を始め、各広告会社の責任も免れないだろう。拝跪して言われたことを聞き、ノタ打ち回って仕事を完遂することが優れたサービスだとして競争してきた結果が、今日の姿だ。

電通の社員に灰皿を投げつける人、ボケカス無能と大声で面罵する人、そうやって高給取りの電通社員を足蹴にして悦に入るような人間が、日本のあちこちの企業にいる。あちこちにいて、今回の騒ぎについて知らぬ顔を決め込んでいる。

正月休みの前に課題を投げつけて、休み明けに提出させる。盆もそう、ゴールデンウィークもそう、週末もそう。

撮影済みで、編集も最終段階にかかろうかというテレビCMに対し、打合せにもいなかったエライさんが急に「気に喰わん。やり直せ」と言ってくる。エライさん本人が言ってくるなら、弁の立つ営業ないしクリエーティブ・ディレクターなら、論理的説明、泣き落とし、詭弁、逆ギレ、屁理屈などなどあらゆる手を使って説得するかもしれない。しかし、現れもせずに部下にそう命じる卑怯者に打つ手はないのだ。

映画の中でもそうだろう。誰が誰に会う、誰にまず通す、というのは武士でもヤクザでもサラリーマンでも一定のルールがあり、身近な誰かの面目を潰すことはできないのだ。

いいですか、恐ろしいのは電通でもNHKでも安倍政権でもない。どこにでもいる普通の人たちだ。自分の存在意義を誇示するがために、他人の時間を奪うエライさんだ。自分の身がかわいくて、上司からの無理難題をそのまま下請けに押し付けるサラリーマンだ。それを唯唯諾々と飲み込んで徹夜してしまう労働者たちだ。

無論、僕もそのひとりであり、何もできることなどなかった。できたのは、会社を辞めることくらいだ。

まとめ

今回はブラック企業の特徴について紹介しました。
もちろん各企業が企業努力でブラック化を防ぐことは大切です。
しかし同時に、社会や消費者が企業に長時間労働を強いているのも事実です。
一人ひとりが自分の問題としてブラック企業を考える必要があると思います。


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