採用業務に追われ、候補者とのコミュニケーションに十分な時間をとれていますか。

大量の定型業務に圧迫され、質の高い採用活動が難しいと感じている担当者も多いことでしょう。

本記事では、生成AIを活用して採用活動を効率化するメリットや具体的な方法、注意点について詳しく解説します。自社の採用プロセスを見直し、最適な人材を見つける方法の手がかりにしてください。

採用活動に生成AIが必要な3つの理由

近年、採用活動に生成AIを活用する企業が増えています。なぜ今、採用の現場で生成AIが求められているのでしょうか。

その背景には、採用市場の変化や、従来の採用活動が抱える構造的な課題があります。

ここでは、採用の現場に生成AIが求められる3つの理由を解説します。

採用競争が激化し、候補者体験の向上が必要なため

近年、採用競争が激化しており、候補者体験の向上が求められてきています。

少子高齢化などを背景に、多くの企業が人材獲得に苦戦しているため、候補者によりスムーズで丁寧な選考体験を与える必要があります。選考結果の連絡が遅れたり、一律な対応をされたりすれば、候補者が企業に抱く印象は悪化してしまうでしょう。

生成AIは迅速かつパーソナライズされたコミュニケーションを実現し、候補者体験を高める助けとなります。

業務量が増加し、採用が属人化しているため

採用業務の量が増え続け、採用担当者の負担が増加していることも理由として挙げられます。

求人票の作成から書類選考、面接調整まで、採用プロセスには多くの定型業務が存在します。これらの業務が特定の担当者に集中すると、そのノウハウの共有がなされず他の人が対応できない状態、いわゆる属人化が進んでしまうでしょう。

生成AIはこうした定型業務を自動化し、採用プロセスをマニュアル化することにも役立ちます。

データに基づいた、客観的で公平な選考にするため

データに基づいた客観的な選考を実現できるのも、生成AIが求められる理由です。

人間の判断には、どうしても無意識のうちに偏見や主観が入り込んでしまうおそれがあります。面接官の経験や価値観によって、評価がぶれてしまうケースもあるかもしれません。

生成AIはあらかじめ設定された基準に基づき、候補者のスキルや経験といったデータを客観的に評価するため、公平性の高い選考が期待できます。

生成AIを採用活動に使う4つのメリット

生成AIを採用活動に取り入れると、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。

生成AIを用いると、採用担当者の負担軽減だけでなく、選考の質そのものを高める効果も期待できます。ここでは、主な4つのメリットを解説します。

採用工数を削減できる

生成AIを活用するメリットは、採用にかかる工数を大幅に削減できる点です。

求人票の作成や大量の応募書類の確認、面接日程の調整といった定型業務をAIが代行します。そのため、採用担当者は候補者とのコミュニケーションや最終選考などの、人間にしかできない重要な業務に多くの時間を割けるようになります。

採用プロセス全体が迅速になり、効率的な採用活動が実現するでしょう。

選考の公平性を高められる

選考プロセスの公平性を高められる点もメリットとして挙げられます。

先述したとおり、人間の評価には無意識の偏見や主観が影響するおそれが十分にあります。その点、生成AIは設定した基準に基づき、すべての候補者を同一基準で評価できるのが特徴です。

面接官の経験値や個人的な印象に左右されず、データに基づいた判断を行うため、多様な人材の採用につながるでしょう。

迅速で丁寧にコミュニケーションが取れる

生成AIは、候補者との迅速かつ丁寧なコミュニケーションを取るサポートを行います。

面接日程の調整や選考結果の通知など、従来であれば時間をかけて対応する必要があった連絡業務を自動化可能です。さらに、自動化できるだけでなく、候補者1人1人に合わせた文面を生成AIが作成するため、画一的な対応になる心配もありません。

このようなコミュニケーションは、候補者の満足度を高め、入社意欲の向上につながるでしょう。

採用データを分析して戦略化できる

採用活動で得られるさまざまなデータを分析し、戦略的な改善に活かせるのも生成AIのメリットです。これまでの感覚や経験だけでなく、客観的なデータに基づいて採用活動全体を評価し、改善できるようになります。

たとえば、「どの求人媒体からの応募者が内定に至りやすいか」「面接での評価と入社後の活躍度の相関関係はどうか」といった分析を生成AIがサポートします。

データに基づいた分析は、採用予算の最適化や、より効果的な採用戦略の立案にも役立つでしょう。

採用業務で生成AIができること

ここからは、AIが具体的にどのような採用業務を支援できるのかを解説します。採用計画の段階から内定者フォローまで、採用プロセスの各段階で生成AIは活躍できます。

採用計画・戦略の立案サポート

生成AIは、採用計画や採用戦略の立案段階から活用できます。過去の採用データや市場のトレンドを分析し、求める人材像に合った採用ターゲットの設定や、効果的な求人媒体の選定をサポートします。

具体的には、「過去3年間の応募データから、〇〇職の中途採用に最も効果的な採用媒体は？」といった質問に対し、生成AIがデータに基づいた回答を提示してくれるのです。

生成AIの活用により、採用担当者は勘や経験だけに頼らず、データに基づいた戦略的な採用計画を立てられるようになるでしょう。

ターゲットに響く求人票の自動作成

ターゲットとなる人材に響く魅力的な求人票の作成も、生成AIが得意とする分野です。生成AIは、求める人物像や企業の文化に合わせて、最適な表現や構成を提案できます。

「〇〇の経験を持つエンジニア向けの求人票を、社風が伝わるように作成して」と指示すれば、AIが候補者の心に響く文章案を複数提示してくれるでしょう。

ゼロから文章を考える手間が省けるだけでなく、より訴求力の高い求人票を短時間で作成可能です。

大量の応募書類のスクリーニングと要約

大量の応募書類のスクリーニングと要約作業は、生成AIの効果が非常に出やすい業務です。人の手では多大な時間がかかる書類確認作業ですが、生成AIなら瞬時に処理できます。

生成AIは、あらかじめ設定された評価基準に基づき、履歴書や職務経歴書から必要な情報を抽出し、候補者の要点のまとめを作成します。採用担当者は有望な候補者を素早く見つけ出し、面接など次の選考ステップに集中できるでしょう。

候補者に合わせたスカウトメールの作成

生成AIは、候補者1人1人に合わせたスカウトメールの作成も得意としています。

生成AIが候補者の職務履歴書や公開プロフィールを分析し、その人の経験やスキルに合わせてパーソナライズされた文面を自動生成します。「〇〇のプロジェクト経験は、弊社の△△ポジションで活かせると感じました」など、具体的な魅力づけを行えるのが強みです。

担当者は個別のメール作成にかかる時間を大幅に削減できるだけでなく、候補者からの返信率向上も期待できるでしょう。

面接の日程調整と候補者に合わせた質問の生成

面接日程の調整や、候補者に合わせた質問の生成なども、生成AIの得意分野です。

採用担当者と候補者の空き時間を調整する作業は手間がかかりますが、AIはカレンダー情報などを連携し、候補者に複数の面接候補日時を提示します。また、候補者の職務経歴書を読み込み、経験やスキルを深掘りするための質問案を生成できるのも強みです。

内定者とのコミュニケーションとフォローアップ

生成AIは、内定者とのコミュニケーションや入社までのフォローアップにも活用できます。

内定承諾から入社までの期間は、内定辞退を防ぎ、入社意欲を維持するために重要です。生成AIは、入社手続きの案内や社内イベントの情報提供など、内定者1人1人に合わせたメッセージを適切なタイミングで自動送信します。

こうしたきめ細やかなサポートは、採用担当者の負担を減らしつつ内定者の不安を解消し、オンボーディングをスムーズにするでしょう。

生成AIを活用した採用ツール3選

ここでは、生成AIを活用した注目のツールを3つ紹介します。自社の課題や目的に合わせて比較検討してみてください。

Our AI面接

出典：Our AI面接

「Our AI面接」は、アバターAI面接官との自然な対話により、一次面接を自動化するサービスです。候補者はPCやスマートフォンなどから24時間いつでも受験できるため、受験率の向上に期待できます。

また、生成AIが面接内容を分析し、自社とのマッチ度を評価するレポート機能も搭載しており、選考の効率化と客観性の向上に貢献します。

面接工数の大幅な削減と、採用スピードの加速を実現したい企業に適しています。

「Our AI面接」のサービスページ

LAPRAS SCOUT

出典：LAPRAS SCOUT

「LAPRAS SCOUT」は、優秀なITエンジニア採用に特化したプラットフォームです。GitHubやSNSでの活動といった候補者の公開情報を生成AIが分析し、スキルや志向性を多角的に分析します。

従来の職務経歴書だけではわからない潜在的な能力を見極め、転職潜在層への効果的にアプローチ可能です。エンジニア採用におけるミスマッチを減らし、採用の質を高めたい場合に有効な選択肢となるでしょう。

HERP Hire

出典：HERP Hire

「HERP Hire」は、採用業務の効率化と採用成果の向上を実現する採用管理システム（ATS）です。このシステムの特徴は、現場のメンバーを巻き込む「スクラム採用」を支援する機能であり、チーム全体で協力しての採用活動を行えます。

30以上の求人媒体からの応募情報自動取り込みや、面接日程の自動調整機能なども搭載し、採用工数を大幅に削減します。データに基づいた分析機能も搭載しており、勘や経験だけに頼らない戦略的な採用活動を後押しするでしょう。

採用に生成AIツールを導入する手順

生成AIツールを採用活動で効果的に活用するには、どのような手順で導入を進めれば良いでしょうか。ツールをやみくもに導入するのではなく、目的を明確にして段階的に導入を進めることが成功のカギです。

ここでは、ツール導入を成功させるための具体的な4つのステップを解説します。

手順①：採用課題を可視化し、導入目的を明確にする

最初に、自社の採用活動における課題を可視化し、ツール導入の目的を明確にしましょう。

解決すべき課題が具体的でなければ、ツール導入の効果を正しく測定できません。

たとえば、「書類選考に時間がかかっている」「面接の日程調整で候補者を待たせている」などの課題を洗い出した後、「書類選考時間を50%削減する」のような具体的な目標を設定してください。

導入目的がはっきりすることで、導入すべきツールの選定基準もおのずと明確になります。

手順②：自動化・効率化したい業務の範囲を決定する

次に、設定した導入目的を達成するため、どの業務を自動化・効率化するのかの範囲を決定します。

すべての採用業務を一度のAI化しようとすると、現場の混乱を招いたり、効果が出にくかったりするためです。採用業務の中でも、とくに時間がかかる「応募書類のスクリーニング」や「面接日程の調整」などの定型業務を特定しましょう。

自動化する範囲を絞り込むことで、ツール選びの軸がより明確になり、導入の効果を高められます。

手順③：複数のツールを比較検討し、自社に合ったものを選ぶ

効率化した業務範囲を決定したら、それを実現できる複数のツールを比較検討し、最適なものを選びます。

それぞれのツールごとに、機能や価格、操作性が大きく異なるため、資料請求だけでなく無料トライアルがあれば積極的に活用することが重要です。必要な機能が揃っているかはもちろん、現場の担当者が無理なく利用できるかどうかも必ず確認しましょう。

しっかりとした比較検討のプロセスを経ることで、自社の採用課題に最も貢献できるツールを見極められます。

手順④：スモールスタートで導入し、効果検証する

最後に、選定したツールをスモールスタートで導入し、その効果を検証します。

はじめから、全部署・全業務で導入すると、予期せぬ問題が発生した際の影響範囲が広くなるため、まずは特定の部署やチームに限定してツールを導入しましょう。そこで、事前に設定したKPIが達成できているか、現場の担当者が問題なく利用できているかを評価します。

実際の検証結果をもとに改善を行い、成功モデルを確立させてから全社への展開を行えば、安全かつ確実にツール導入を進められます。

生成AIを採用に導入する注意点

生成AIは企業の採用活動のサポートを行いますが、決して万能ではなく、導入にあたって理解しておくべき注意点も存在します。

ここでは、とくに重要な4つの注意点について解説します。

個人情報の取り扱いに注意する

生成AIを採用活動に導入する際は、候補者の個人情報の取り扱いに最大限の注意が必要です。

生成AIツールは大量の個人情報を取り扱うため、情報漏えいや不適切な利用のリスクが伴います。応募書類に含まれる氏名や連絡先などの個人情報を生成AIに学習させる場合、個人情報保護法などの法令を遵守しなければなりません。

セキュリティレベルの高いツールを選定したうえで、利用目的を定め、候補者から同意を得るなど、厳格なデータ管理体制を構築する必要があります。

AIの評価が偏る可能性を理解する

生成AIの評価は、学習データの影響を受けるため、意図せず偏ってしまうおそれがあることを理解する必要があります。

たとえば、過去の採用実績に特定の属性への偏りがあれば、AIもその傾向を引き継いでしまうかもしれません。

AIの評価はあくまで客観的な判断材料の一つと捉え、最終的な判断は人間が行う体制の整備が重要です。

生成された情報は必ず間違いがないか確認する

生成AIが作成した情報は、その内容の正確性を人間が確認する必要があります。生成AIは事実に基づかない情報（ハルシネーション）を生み出すほか、古くなった情報を参照するおそれがあるためです。

たとえば、候補者へのスカウトメールに誤った情報が含まれていたり、求人票の条件が最新でなかったりすると、企業への信頼を損なってしまうかもしれません。

生成AIの出力結果がすべて正しいものであると思い込まず、必ず人間が最終チェックを行う運用体制を整えましょう。

コストに見合う効果があるか見極める

導入コストに見合う効果が期待できるかを見極めるのも重要なポイントです。ツールの導入には、初期費用や月額費用が発生するため、その投資額に見合うだけの成果が出なければなりません。

「採用工数を年間◯時間削減できるか」「採用決定率が◯%向上するか」といった具体的な効果を試算し、ツールの費用と比較検討を行いましょう。

短期的なコスト削減だけでなく、採用の質の向上のような長期的な視点も含めた費用対効果の判断が、失敗しないツール選びにつながります。

生成AIを採用活動に使用する成功事例

生成AIは、すでに多くの企業の採用活動で活用されており、成果を上げています。実際の導入事例とその効果を知ることで、自社での活用イメージが明確になるでしょう。

ここでは、実際に生成AIを導入し、採用プロセスを改善した3社の事例を紹介します。

サッポロビール株式会社：エントリーシート選考にAI活用

サッポロビール株式会社では、新卒採用のエントリーシート選考に膨大な時間を要していたことが課題でした。

そこで、過去の選考データを学習させたAIをES選考に導入し、書類選考の時間を候補者とのコミュニケーションに充てるようにしています。AIが合格基準を満たしていると判断したエントリーシートは通過とし、それ以外は従来どおり人事担当者が確認して最終判断を下す体制を整えました。AIと人間のダブルチェックを行いつつ、選考時間の約40%の削減に成功し、セミナーなどの候補者との直接の対話機会を増やすことができたそうです。

参考：新卒採用のエントリーシート選考においてAI（人工知能）を活用

キリンホールディングス：新卒採用でAI面接を導入

キリンホールディングスでは、多様性を重視した採用を強化するため、新卒採用の一次面接に生成AIを活用しています。

AI面接の導入により、学歴や経歴だけでは測れない候補者のポテンシャルを多角的に可視化し、公平な選考を目指しています。トライアル導入を行なった結果、AIの評価と人事担当者の評価に相関関係が見られ導入に至ったそうです。

AI面接の導入により創出された時間は、最終面接などの候補者とより深く向き合う時間に充てられ、採用の質の向上にも貢献しています。

参考：キリンホールディングス、AI面接官を本格導入決定

ソフトクリエイト：新卒採用にAIチャットボットを活用

ソフトクリエイトでは新卒採用において、学生とのミスコミュニケーションや、学生が気軽に質問しにくいという課題がありました。

そこで、学生が24時間いつでも気兼ねなく質問できる生成AIチャットボットを自社開発して導入しました。導入の結果、人事担当者の提携的な問い合わせ対応の負荷が軽減されただけでなく、学生の企業理解度を深め、入社意欲を高める効果も生まれたそうです。

AIチャットボットが、採用活動全体の質の向上につながった好例だといえるでしょう。

参考：生成AIの業務効率化事例－ 新卒採用向け 生成AIチャットボット「ソフクリAI質問ルーム」

生成AIを採用に活用して質と効率を高めよう

本記事では、生成AIを採用活動に活用するメリットや具体的な方法、導入の注意点までを解説しました。生成AIは、求人票の作成から面接、内定者のフォローまで、採用業務の多くの場面で活躍し、工数の削減や選考の公平性向上に貢献します。

採用活動で生成AIを活用する際に重要な点は、AIにすべてを任せるのではなく、AIを優秀なアシスタントとして活用することです。生成AIを取り入れると、採用担当者は候補者との対話のような、人間にしかできない本質的な業務に注力できるようになります。

まずは自社の現在の採用課題を洗い出し、生成AIの力を借りながら採用活動の質と効率を高めましょう。